佐倉唄『オタサーの姫と恋ができるわけがない。』第1巻

『禁書目録』シリーズに出てくる学園都市は東京都立川市をもとにして組み立てていますが、こちらは仙台を舞台にしています。この本を読む前に、同じ仙台を舞台にした井上ひさしの『青葉繁れる』を読んだんですが、『青葉繁れる』が朝鮮戦争時の仙台一高で劣等生5人組のバカな青春をコミカルに描いたのであれば、こちらは2010年代の仙台にある中高一貫校を舞台にした「サークルの姫」を中心にした今どきのオタクたちの物語です。

高校に入ったら馬鹿にされようともオタ充になることを志した神園心路は、かつて振った幼馴染の花咲百合姫と再会してしまう。しかし、彼女はライトノベル作家として大ブレイクし、オタサーの姫と呼ばれていた。そして、二次元文化研究愛好部(ニジケン)は廃部寸前の弱小部活であり、部員が集まり、なおかつ中間試験で一定の成績を出さない限りは廃部になるとのことだった。主人公は彼女のたっての願いから、ニジケンの復活のために動き出す。ニジケンは姫と取り巻きのトラブルで廃部寸前になったのだが、そこに隠れオタのギャルの空野継未(そらのつぐみ)、ハーフな先輩の雪村雫九(ゆきむらしずく)、そして猫耳実装で唯一の中学生である月島天架(つきしまあまか)の3人が入部して……。

明らかにエロゲやギャルゲーの影響が強い(!)キャラクターはこの際置いといて、八王子を舞台にした『29とJK』同様に、今作では実際に仙台市にある地名が出ています。主人公たちが通う高校は小鶴新田駅の近くで、そこにある東北学院中学校・高等学校がモデルかと思われます。ちなみに自分が仙台に居たころは五橋近辺にありました。当時は男子校でしたが、今では共学になってるのか? なお、周囲は市街地にありながらも田んぼだらけでした(Googleマップで確認した)。大震災の被災地となった荒井周辺と違い、小鶴新田駅周辺は大震災を免れたんだなぁ……。

そして、主人公たちの最寄駅は長町駅周辺(ちなみに、筆者は大学卒業して実家に戻るまでの4年近く住んでいました)。仙台にあるアニメイトと来れば、以前は魚屋の上にあったため(アニメイトの近くには市場があるためか)「魚臭いアニメイト」と呼ばれていました。

それ以外には、実在する作品がすべて実名で登場しています。げんしけんは俺も全巻読みました。アニメの続編やってくれないかなぁ。シュタゲは本編だけでなく、ゼロもきちんとやりました。ゼロは何気にCG100%も達成しました(セットでフルコンプ達成したのは、実はガルフレVita版だったりする)。

東京ならばいざ知らず、地方都市、よりによって仙台を舞台にしたラノベは自分の知る限りではこれが初です。『青葉繁れる』の時代と比べると高校生を取り巻く環境が良くなったのか、それとも悪くなったのかというと、良くなったと言えるし、悪くなったとも言えるし……。バカをやった五人組の青春を描いた『青葉繁れる』を一読してから本作に入ると、楽しめること請け合いです。本番は夏祭りの模様がきっちり書かれる第2巻から!

井上先生、これを天国で読んでどう思うんだろうなぁ……。

オタサーの姫と恋ができるわけがない。 (ファンタジア文庫)
佐倉 唄
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